スカジャンの図案といえば虎、龍、鷲、などの和柄が有名です。しかし、ヴィンテージとして存在が確認されている個体には、艦名と艦番号、師団名、航空部隊の愛称、基地名、さらには郵便・通信・救難任務まで刺繍した一着があります。
これらは「ミリタリー風」の飾りというより、持ち主が所属した艦・部隊・勤務地を背中に残した記念品。本記事では年代判別はいったん脇に置き、実在が確認されている図案を4カテゴリに整理します。
まず一覧|知られざるミリタリー図案
- 艦名・艦番号をそのまま刺繍した艦船柄
U.S.S. Fall River CA-131/U.S.S. Weiss APD-135/U.S.S. Helena CA-75/U.S.S. Ticonderoga CVA-14 - 陸軍・空挺部隊柄
11th Airborne/Sendai Japan/24th Infantry Division “To Hell and Back”/1st Cavalry Division - 航空部隊柄
17th Bomb Group “Black Knights”/18th Fighter Bomber Wing/20th Air Force/Okinawa/1246th AACS/K-55/Osan-ni Korea - 基地・通信・支援部隊柄
13th Signal Company/Hokkaido Japan/1st Air Postal Squadron/Nagoya Japan/6147th “Mosquito”/6921st Security Wing/Alaskan Aircraft Rescue/Eielson A.F.B.
1.艦名・艦番号をそのまま刺繍した艦船柄
艦船柄の面白さは、船の絵だけで終わらないことです。「U.S.S.+艦名」に、CA、CVA、APDなどの艦種記号と番号が添えられ、どの艦を記念した一着なのかまで特定できます。なお、4隻はすべて“戦艦”ではなく、重巡洋艦、高速輸送艦、航空母艦です。





U.S.S. Fall River CA-131
ヴィンテージとして存在が確認されている一着には、重巡洋艦Fall Riverと「CA-131」「Flagship Asiatic Fleet」「China」「Japan」の文字が入ります。米海軍の公式艦歴とも艦名・番号が一致します。
U.S.S. Weiss APD-135
APDは高速輸送艦の記号。Weissは朝鮮戦争中、UDTを乗せた特殊作戦にも参加しており、米海軍の記録にも活動が残ります。
U.S.S. Helena CA-75
Helenaも重巡洋艦で、ヴィンテージ個体には艦名・艦番号を主役にした図案が存在します。無機質な「CA-75」こそ、特定の一隻に乗った記憶を示す重要な文字です。
U.S.S. Ticonderoga CVA-14
「Far East Cruise 1957–58」と巡航年まで入った例。公式艦歴でも、1957年秋から1958年春の極東展開を確認できます。
掲載した復刻例の「U.S.S. Princeton CV-37」とは
画像の背中に刺繍された「CV-37」は、米海軍の航空母艦U.S.S. Princetonの艦番号です。朝鮮戦争の勃発を受けて1950年8月に再就役し、同年12月から第77任務部隊(TF 77)の一員として朝鮮半島沖で航空作戦に参加しました。
1952年4月30日には再びTF 77の戦闘海域へ入り、その後138日間にわたって艦載機を発進させています。同年10月1日に艦種記号が「CV-37」から攻撃空母を示す「CVA-37」へ変更され、11月3日に米本土へ帰還しました。つまり復刻例にある「U.S.S. Princeton」「CV-37」「TF 77」の組み合わせは、同艦の朝鮮戦争期の経歴をかなり具体的に表したものです。米海軍公式艦歴
テーラー東洋の商品説明では、元になったヴィンテージは1952年4月から10月の航海中、Princeton乗組員がカスタムオーダーした図案とされています。艦の絵だけではなく、艦番号と任務部隊章まで読めるからこそ、背景にある航海をたどれる好例です。
2.陸軍・空挺部隊柄

- 11th Airborne/Sendai Japan──パラシュート、翼、降下兵、龍に「SENDAI JAPAN」を組み合わせた図案。米陸軍公式史では、第11空挺師団が占領部隊として1949年5月まで日本に駐留したことを確認できます。
- 24th Infantry Division/“To Hell and Back”──師団章、朝鮮半島地図、標語を組み合わせた記念図案。第24歩兵師団は日本から朝鮮半島へ投入された最初期の米陸軍師団でした。米陸軍戦史
- 1st Cavalry Division──黄色い盾と馬頭の師団章、Japan/Koreaなどを組み合わせる例。師団は占領期の日本から1950年に朝鮮戦争へ出動し、1951年末に日本へ戻っています。米陸軍の部隊史
3.航空部隊柄
- 17th Bomb Group “Black Knights”──黒い騎士という愛称と爆撃機を組み合わせる図案。朝鮮戦争期の17th Bombardment Wingは黒塗りのB-26 Invaderで夜間阻止攻撃を行い、“Black Knights”と呼ばれました。米空軍公式史
- 18th Fighter Bomber Wing──翼名、朝鮮半島、戦闘機を構成した図案。同部隊は朝鮮戦争でF-51 Mustangを運用しました。嘉手納基地公式史
- 20th Air Force/Okinawa──「20」の部隊章とOkinawaを大きく見せる図案。第20空軍司令部は1949年5月から1955年3月まで嘉手納に置かれ、琉球列島の防空・後方支援を担いました。米空軍歴史研究局
- 1246th AACS/K-55/Osan-ni Korea──AACSはAirways and Air Communications Service。戦闘機部隊ではなく、航空管制・航法・通信を支えた組織です。「K-55」は当時のOsan-ni飛行場を示すK-site番号で、地名と部隊番号を記録する図案になっています。



4.基地・通信・支援部隊柄

- 13th Signal Company/Hokkaido Japan──通信旗と北海道の地名を大きく刺繍。第1騎兵師団の通信部隊で、師団が日本へ戻った時期の北海道勤務を示す図案です。
- 1st Air Postal Squadron/Nagoya Japan──郵便袋や翼、APO、NAGOYAを組み合わせた航空郵便部隊柄。戦闘ではなく、兵士と故郷をつなぐ郵便業務を記念しています。
- 6147th “Mosquito”──正確には「Air Base Squadron」ではなく、6147th Tactical Control Squadron/Group系統。低速のT-6系機で目標を発見し、攻撃機を誘導した前線航空管制部隊です。米空軍国立博物館
- 6921st Security Wing──Security Wingの部隊番号そのものを主役にした図案。華々しい戦闘部隊だけでなく、通信情報・保安系の勤務も記念品になったことが分かります。
- Alaskan Aircraft Rescue/Eielson A.F.B.──墜落機、救助隊、デビルの顔に基地名を組み合わせた救難柄。一般的な白熊や犬ぞりのアラスカ柄とは異なり、任務内容が前面に出ています。

部隊史と、ジャケット自体の年代は分けて考える
部隊名や艦番号は、図案を読み解く強い手掛かりです。ただし、その部隊が活動した年代と、手元のジャケットが作られた年代は同じとは限りません。後年物でも、過去の部隊名・基地名は再現できます。
まず「何を記念した図案か」を読み、そのうえで生地、刺繍、リブ、縫製、ジッパーなどを合わせて個体の年代を見る。この順番が安全です。
まとめ|背中に残された、もう一つの軍歴
ミリタリー図案には、艦船、歩兵、空挺、爆撃・戦闘航空部隊だけでなく、通信、郵便、航空管制、保安、救難まで残されています。虎や龍が日本土産としての顔なら、艦名・部隊番号・基地名は持ち主個人の履歴です。
ファッションに取り入れた際、ミリタリー柄は他の和柄とは少し違った雰囲気になります。また、他の人ともかぶりずらく「それもスカジャンなの?」って感じで注目になること間違いなし。是非コレクションに加えてみては?

